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2005.10.14
コランダム鑑別のフレームワーク
〜加熱の履歴、産地、含浸・拡散処理鑑別〜

 現在、コランダムの鑑別において、合成石の看破など生成起源の判別はもとより、加熱の履歴に関する個別表示、Be(ベリリウム)拡散加熱処理、鉛ガラス含浸処理など多くの課題を抱えています。これらは、AGL(宝石鑑別団体協議会)が定めた標準的な鑑別手法(FTIRなどの分光分析を含む)において“粗選別”が可能ですが、場合によっては蛍光X線分析、ラマン分光分析、レーザー・トモグラフィ、LIBSといったより高度な分析手法を用いた総合鑑別が必要となります。
 全国宝石学協会(GAAJ)ラボラトリーでは、コランダムの総合鑑別に対する万全の検査体制を確立し、皆様の信頼にお応えしております。

加熱の履歴に関する鑑別
 2004年9月の鑑別表記ルール改定に伴い、AGLではルビー、サファイアの加熱について個別表示を行うことになりました。AGLでは、これらを鑑別するためには紫外-可視領域、FTIRなどの各種分光光度計の使用を必須とし、特に非加熱と判断するためにはレーザー・トモグラフィ、ラマン分光分析あるいは蛍光X線分析といった先端的で高度な分析手法を用いた総合判断によることを規定しています。
 加熱されたコランダムの鑑別には宝石用光学顕微鏡による詳細な内部特徴の観察が重要です。多くの結晶インクルージョンはコランダムより低い融点のため、加熱によって融解したり、変色したりします。また、液体インクルージョンは癒着し、加熱に使用される触媒等がフラクチャーに残留物として見られることがあります。
 ルビー、サファイアは、加熱が施されることにより紫外-可視領域、赤外領域の分光スペクトルが変化することが知られています。特にブルー・サファイアや一部の産地の加熱ルビーではFTIRの分析結果に際立った特徴が現れます。
 さらに、全国宝石学協会(GAAJ)のオリジナルテクニックであるレーザー・トモグラフィでは、加熱によるディスロケーション(線状欠陥)の発達や蛍光色の変化を鋭敏に捉えることができるなど、加熱の看破には極めて有効であることから、海外の宝石鑑別ラボからも熱い注目を集めています。

産地鑑別
 産地鑑別とは宝石産出地の地理的地域の限定を行うことです。しかし、正確には宝石の地質学的産出状況を推定することであり、それゆえ同様の地質環境から生成した宝石は産地(産出国)の限定は困難となります。鑑別結果の精度を高めるためには、鑑別技術者が長年に渡って蓄積してきた知識や経験、ラボが保有する膨大なデータ・ベース、そして高度な分析技術が必要不可欠です。
 宝石用光学顕微鏡による内包物の観察は産地鑑別の第一歩となります。特に初生インクルージョンは宝石が産出した母岩の推定に極めて有効です。これらの内包する鉱物種をさらに正確に同定するには、空間的分解能に優れた顕微ラマン分光法が有効です。また、紫外-可視分光測定や蛍光X線分光法による微量元素の分析は、地質学的産出状況を推定するのに有効な手法として知られています。さらに全国宝石学協会技術研究室では、LA-ICP-MS(レーザーアブレーション・誘導結合プラズマ質量分析装置)による超微量元素の分析が同様の地質学的産出状況における産出国の限定に極めて有効であることを世界に先駆けて証明し、必要に応じて有効利用しています。

鉛ガラス含浸処理の鑑別
 2004年の上半期から鉛ガラスが含浸されたルビーを見かけるようになりました。これらは透明度の改善を目的にしたもので、色の改善のための加熱に伴う残留物ではありません。鉛ガラスの含浸処理が行われたルビーは、たいていフラクチャーに特有のフラッシュ効果が見られます。レントゲン写真を撮影すると含浸されたフラクチャーは鮮明に映し出されます。時にフラッシュ効果が認められないファセット・カット石やスター石などもありますが、このようなケースの最終的な判断には蛍光X線分析による鉛の検出が最も確実です。

Be(ベリリウム)拡散加熱処理の鑑別
 外来起源のBe(ベリリウム)を拡散させる加熱処理が問題になって数年が経ちました。この処理は外縁部に沿った色むらが認められた場合にのみ一般鑑別で看破が可能です。それ以外では蛍光X線分析等の分析手法を用いても識別が不可能で、SIMS(二次イオン質量分析)やLA-ICP-MSなどの高度で高額な機器によるBeの検出が必要となります。
 全国宝石学協会技術研究室では、2003年よりLA-ICP-MSによるBe拡散加熱処理の分析検査を開始しておりますが、その一方でよりスピーディかつ低コストでの分析を実現するためSSEF(スイス宝石学研究所)の協力のもと研究を進めてきた結果、新たにLIBS(レーザー誘導分光分析装置)を用いたBe検知サービスを開始できることになりました。

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