LA-ICP-MS分析装置導入に寄せて
| レーザー・アブレーション(LA)システムを用いた |
| 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS) |
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| 全国宝石学協会 技術研究室 |
全国宝石学協会の業務の中核をなすラボ・レポートのバック・ボーンには、高度な分析設備の充実は不可欠です。技術研究室ではすでに25年以上にわたり、各種の技術および分析機器の導入に努めてまいりましたが、2002年12月20日発表の“新しい技法によるコランダムの処理に関する研究調査報告”にも述べたように、これらに行われる新技法の看破には軽元素の分析機器が必要との結論に至り、このたび宝石検査ラボとしては世界で初めて、LA-ICP-MS(レーザーICP質量分析装置)を技術研究室に導入致し、実務レベルでの稼動の運びとなりました。
LA-ICP-MSとは
LA-ICP-MS (Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)とは、 固体試料表面に波長の短い高エネルギーのレーザーを照射し、蒸発・飛散した粒子を更に高周波プラズマでイオン化し、その質量を分析することによって試料の構成成分の定性、定量分析を行う手法です。軽元素のHe(ヘリウム)から重元素のU(ウラン)までの広範囲の元素を非常に微量なppb 〜ppm(10億〜100万個中の1個)レベルまで迅速に検出できる特徴をもっています。このことから極微量の不純物成分の分析に極めて有効な手法として最先端産業界の注目を集めています。
装置の概要
ICP-MS装置は大きく分けて試料導入部、イオン化部、質量分析部から構成されています。
通常は試料を適当な前処理により溶液化したのち、試料導入部より装置内に導入しますが、固体結晶である宝石ではそれが不可能なため、レーザー・アブレーション(LA)システムを用いています。レーザーで蒸発・飛散した粒子は不活性なアルゴン・ガスと共にイオン化部であるICP(Inductively Coupled Plasma:高周波電力により発生されるプラズマ)に導入されます。ICPは5,000〜7,000℃と非常に高温で導入された試料中のほとんどの元素は90%以上の効率でイオン化されます。生成されたイオンは質量分析部に取り込まれ、そこで質量電荷比ごとに分離され、イオンの数が計測されます。その質量電荷比から元素の種類が(定性)、検出したイオンの数から元素の量が(定量)分かります。
蛍光X線分析との比較
現在、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDXRF)は非破壊の元素分析法として先端の宝石鑑別ラボでは標準的な手法として利用されています。蛍光X線分析法による微量元素の分析は他の分析手法(分光光度計など)と組み合わせることによって宝石の着色原因やルビー、サファイア、エメラルドなどの地質学的な産状・産地を知る手がかりになります。LA-ICP-MSはこの蛍光X線分析をはるかに凌ぐいくつかのメリットがあります。
1検出限界が極めて低い(感度が高い)。蛍光X線分析では実質上検出限界は数十ppmですが、LA-ICP-MSではその1,000〜10,000倍も感度が高くなります。
2原子番号の小さい軽元素の分析が可能。蛍光X線分析では通常、Na(ナトリウム)より原子番号の小さなLi(リチウム),Be(ベリリウム),B(ホウ素)などの元素は分析できませんが、LA-ICP-MSでは高感度でこれらの分析が可能です。
LA-ICP-MSの応用例
蛍光X線分析よりも高感度でさらに多くの種類の元素を分析出来ることから、宝石の着色原因や産地同定をより精度高く行える事が期待されます。特に、現在宝飾業界全体の問題となっているBe(ベリリウム)を拡散させた新技法による加熱コランダムの看破に有効と考えられます。技術研究室で予備的に分析・研究した結果、新技法によって加熱されたコランダムからは例外なく数ppm程度のBe(ベリリウム)が検出されています。この軽元素がどの程度着色に関与しているか今後の課題ですが、その解明にも役立つものと期待されます。また、宝石に含有される微量元素は地質学的な産状を反映し、その検出が産地同定の科学的な裏づけとなります。この微量元素の分析を超高感度で行うことにより産地同定の精度がさらに向上することが期待できます。
検査の実施を証明するLaser mark
レーザー・アブレーション(LA)システムは固体試料に波長の短い高エネルギーのレーザーを照射し、その物質を蒸発・気化させます。したがって、この分析手法は実施後、石表面にはその痕跡が残ります。分析の感度は蒸発・気化させる量が多いほど上がりますが、弊社ではリサーチの結果、最小限の痕跡で軽元素の安定した感度が得られる条件を満し、かつ検査実施を証明するマークとなるよう、ガードル上に、GAAJ(Gemmological Association of All Japan)のロゴ・マークが刻印される方法をとっております。このロゴ・マーク(GAAJ Laser mark)は、ダイヤモンドに現在も行われているレーザー刻印と同様に、宝石の美しさを損なうことなく、10倍ルーペでやっと確認できる程度のサイズです。
<GAAJ Laser markのサイズ>
レーザーラインの幅:20μm(0.02mm)、縦横サイズ:100×230μm(0.01×0.23mm)、深さ1〜3μm(0.001〜0.003mm)。
※なお、検査石のサイズやガードル厚さにより、GAAJ Laser markの刻印が困難な場合には、必要に応じてご相談させていただきます。
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検査レポートの発行
・A5版のキャラクタリスティック・レポートを発行いたします。
なお、このレポートは軽元素質量分析に関する検査レポートであり、宝石鑑別書に代わるものではありません。宝石鑑別書は別途、基本料金にて申し受けます。
・全国宝石学協会技術研究室にて分析検査済みの証として、ガードル部に“GAAJ”Laser markを刻印します。
■軽元素分析検査料金(税込):一般42,000円 会員21,000円 ・「キャラクタリスティック・レポート」発行料含む。消費税別。
・「キャラクタリスティック・レポート」はGAAJ三つ折りカバー付
■所要日数:7日(宝石鑑別書にかかる日数は含まれておりません)
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